トランスアメリカ 2006.9.9 4.5点
「スカートの下に何があるかよりもっとだいじなこと」
ちょっと変わった家族もんにロードムービーとくれば、私の好みにぴったりで、文句なしに面白かった。
間近に性転換(trans)手術を控えている性同一障害の元男のブリー、昔一度だけ付き合った彼女の産んだ息子から突然に電話がかかってくる。
ニューヨークの拘置所から少年を引き取り、実父と名乗れぬまま、女と少年の奇妙なロサンゼルスまでのアメリカ大陸横断(trans
america)二人旅が始まる。
オカマのしぐさが笑えたり、縁を切った彼女(彼?)の両親との再会に切なくなったり、17歳の少年の美男子に見惚れたり。
最初のシーンで体型くっきりのブリーの後姿は、腰がくびれてどうみても女の身体つきなのが気になったけど、見ているうちに、だんだんと、演技者が本当は男なのか?と思えてくるくらい上手い。
女優が女になった男を演じる。これも見ものです。
ダ・ヴィンチ・コード 2006.6.27 3.5点
ストーリーは公式映画サイト↑で。
待望のベストセラーの映画化、キリスト教の解釈をめぐって世界中でボイコット騒動も起きている話題の映画。
相乗効果比較作用で二度美味しい、これは、原作とセットで見ないとアカンと思う。
昨夜遅くまでかかって解説本を読んで、キーワードの言葉など予備知識を入れておいたので、だいたいは筋を追っていけたが、途中でだれがええもんで悪もんか目まぐるしい展開についていけなくなったり、中ほどで、主人公のソフィーが末裔だと目星がついてしまったり。
で、結局は、キリスト教に興味がなければ、なぜこれがそんなに大騒ぎするほどのもんなのか実感できないし、それも興がのらない理由かもしれない。
ただし、原作の場合はミステリとしてじっくり謎解きを楽しめるような気がする。
なんといっても文庫本3冊分だから。
映画だけではちょっと消化不良気味なので、本は読んではみるつもりだけど、本の結末は映画版以上に物足らないらしい。それもなんだかなぁ。
同じく教会ものなら、「薔薇の名前」のほうがうんと面白かった。映画も本も。
(ブログより転載)
グッドナイト&グッドラック 2006.5.13 3.5点
戦後アメリカ、マッカーシー旋風(赤狩り)が吹き荒れた時代、正義と自由を守るために戦ったテレビキャスターの実話にもとづく。
全編白黒映画、ドキュメンタリーを見ているような味わいで、途中、ちょっと眠たくなったりする。
ばかげたバラエティ番組満載の今のテレビ局、報道とは何かと考えてもらいたいもんだけど、たぶん、視聴者だってお気軽志向が強いのだろう。
しかし、それでも、報道の使命ってもんがあるだろうが。
ブロークバック・マウンテン 2006.3.18
4.5点
1960年代、ワイオミングの山奥で羊番と雇われた貧しいカーボーイのジャックとイニス。
同性愛など許されなかったころ、友情から芽生えた許されない愛に落ちる。
それぞれ世間並みの結婚をして子どもも生まれても、お互いに忘れられず、年に数回、釣りと称して密会を重ねる。
会えない辛さ、人を恋うる気持、ふつうの恋愛でないことの葛藤。
男同士の愛というのに、この美しさと切なさを痛いほど感じ取ることができるのは、ワイオミングの自然描写のせいだけでもないだろう。
人を想うということには、男も女も老いも若きもないということだ。
原野の山と川、雄大な自然はやっぱり映画館で見たい。
お互いの配偶者や両親、周りの人たちの動きも個性的で、静かだけどドラマチックな仕上がりになっている。
単騎、千里を走る 2006.2.18 3.5点
わりと期待して見に行ったけど、期待しすぎた。
長く息子と不仲になっている父親(高倉健)が息子の病をきっかけに、中国へ渡って息子の果たせなかった夢(仮面劇を撮影すること)を追う。
高倉健が好きというわけではないので、最後まで顔をつき合わせているのがしんどくなってくる。
前半はドキュメンタリータッチ(中国人俳優はみな素人を採用)で、ちょっと違和感があるし、後半、死にかけている息子に会うためにさっさと帰国するのがふつうなのに、なんで、そんなに現地にこだわるのか理解できない。
この監督(チャン・イーモウ)いつも思い入れが少し強すぎるけど、ドラマチックには仕立ててあるし、子役の使い方は相変わらず上手いし、この男の子、自然っぽくて表情も可愛い。
中国雲南省の風景(麗江や雪山)ロケは素晴らしく見ごたえがあっった。
やっぱり健さんが好きか好きでないかで決まってしまう映画なのね、これは。
博士の愛した数式 2006.2.3 5点
寺尾聰扮する記憶が80分しか持たない数学博士のところに、家政婦として出向く深津絵里とその息子(ルート)との心をつなぐ語りというか…
原作も良かったけれど(ほとんど忘れてる)やっぱり映画は映像として入ってくるのでいつまでも余韻が残る感じ。
原作にはなかった、大人になったルート(吉岡秀隆)が数学教師となって、生徒に数学と博士を語る部分がとても良くできていて、原作ではちょっと眠くなりそうな数式も黒板に書かれて説明されるとなあるほど。
吉岡秀隆って「三丁目の夕日」に出てるときはむさくるしかったけど、こうやって見ると、まだまだ初々しい青年っていう感じ。
だいたい、いつも、あの髪の毛多すぎるヘアスタイルが変だと思う。
最初、あれっと思った深津絵里、常盤貴子に似てない?
(似てへんか…最近、人の顔の区別がつかないのだ)
同じ監督の「阿弥陀堂だより」の山里の雰囲気がよく似ているが、博士の家に家政婦として通いだす始まりの時期もいい。
4月初めの芽吹く前から徐々に春になっていく季節が目にやさしい。
自分の誕生日だからっていうわけでもないけど、私、1年のうちでこの季節が一番好きなのだ。
博士役の寺尾聰、もっとじじむさい(笑)かと思っていたら、最後の江夏の野球ジャンパー着てキャッチボールしてる姿はきりっと男らしかった。
昨日の新聞に、「年取ると役柄も制限されてくるが…」と自分で語っていたが、宇野重吉みたいになるまでは、まだまだ先のことのようだ。
しかし、よく似てる。
年と共に偏屈になる私も、ちょっとウルウルしたりして、配役、映像、ストーリー、どれも素晴らしく、よかった! よかったー よかった〜
プライドと偏見 2006.1.14 5点
大好きな英国物、イングランドの景色も素晴らしいと映画評に載っていたので、これはぜひとも見なくっちゃと、初日に出かけた。
肝心のイングリッシュな田園風景はそれほど映ってはいなかったが、小粋な恋愛物として楽しめた。
18世紀末、女は相続できないという英国、田舎に住む5人姉妹、望みはいかにして財のある殿方と結婚するかである。
結婚をめぐるちょっとした喜劇仕立てで、次女エリザベスを演じるキーナ・ナイトレイが若き日のヘップバーンみたいにりりしくてかわいい。
エリザベスと大金持ちで無愛想な青年貴族、内心惹かれるものがあるのに、変なプライドがじゃまになって、ズケズケと言い合いしたり、何かとギクシャクとする2人。
仲の良い5人姉妹はちょっと若草物語の姉妹のことを連想させた。
ジュディ・デンチ扮する意地悪で尊大なお館様?がピッタリ、狂言回し風の母親のオーバーリアクションなど、笑える場面も多い。
姉の恋愛、妹の駆け落ち騒ぎなどエピソード話もからまって2時間あまり、飽きることなく楽しめる。
英語が読めたら、ジェーン・オースティンの原作を読んでみたいところだ。
せめて、翻訳を読んでみるかな。
女性の衣装も素敵だし、恋愛モノでハッピーエンド、小気味良い内容、もういちど見てみたいわぁ。
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