ニュージーランドの旅 その他・エピソード3

夜の迷子

クイーンズタウンはワカティプ湖に面したリゾート地で、信州の白樺湖をもっと広くキレイにおしゃれにした感じかな。 (これじゃ、よけいイメージがわかないか)
ホテル3泊目の夕食後、7時を過ぎてもまだまだ陽は高いし、街まで繰り出すことにした。
ホテルからは湖まで下り、湖岸沿いに歩いて40分くらいかかるけど、ツアーの運ちゃんがバスで中心街まで送ってくれた。

買い物は前日に済ませていたし、今日は街見物、入江をぐるっと回って突き出した半島にあるガバメントツーリストガーデンまでそぞろ歩き。
バラ園は盛りを過ぎていたけれど、マーガレットやダリアなど、見慣れた花が咲いている。園芸品種に関しては、日本と全く同じ物が多く、珍しい植物も見当らない。
それだけ、日本の園芸品種の輸入や改良がすすんでいるということだ。最近では、エリカなどいろんな種類があり、南半球の野生植物から改良された花物も多い。
公園は、樹木の種類が多くて、それも大木が茂り、樹形や葉の色、大きさがさまざまで、木を見ているだけでも楽しい。

木々の合間から藍色のワカティプ湖が見え隠れする。
ワカティプ湖は幅2〜5km 周囲80kmの細長いS字型の湖で、色は深いブルーで、海のようにザブンザブンと波が寄せていた。
この湖の面白いところは、水面が頻繁に15分毎に8cm上下するということだ。
3人で変わりばんこに記念撮影をするが、陽が沈んであたりが薄暗くなり、西空が少しずつ夕やけ色に染まって、ギャーギャーと鳴き遊んでいた浜辺のカモやユリカモメ、湖面に浮かぶ遊覧船が、だんだんとシルエットになっていく。

街の明かりが灯され、時刻も9時を回ったし、そろそろホテルに戻ること  にしよう。 今夜は買い物もないので、お店の車に便乗するわけにもいか ないし、タクシーの乗り場もよくわからんし、歩いても40分ほどだし、さわやかな夜風に吹かれながら歩いて帰ろか、と 波の音を聞きながらブラブラと歩き出す。ホテルまでの道路はバスで数回通ったが、一度も歩いていない道だし、果たして道がわかるか?
湖岸沿いをしばらく歩いてから、山方面に上がる道路を右折する。たぶん 確かこの道。…だと思う。ここんところ、方向音痴を自覚したばかりの私  は、このとき一抹の不安がなくもなかったが、坂道を登っていく。


     ♪  そのときが 3人の 旅のはじまり
        ひとりじゃないって すてきなことね
        あなたの肩ごしに も輝く
        3人行くって すてきなことね
        いつまでも どこまでも        ♪

で、いつまでも どこまでも歩き続けたけれど、とっくにホテルについているはずの40分を過ぎても、それらしきホテルは現れないし、もう真暗になってしまった。
あたりに家は建っているものの、シーンと静まり返っていて、これは!と思ったホテルは全然知らん名前のホテルだし。
確か、昨日バスで通った時に、この家見たことあるから、間違いないと思うけど。
行きつ戻りつ、もう、どこがどこやらわけわからんようになって、上り坂でかいた汗が冷えて身体もだんだん寒くなってくるし、頭上では南十字星が笑ってるし、私らの顔も引きつってくる。

とにかく、どっかで道を訪ねないと、戻れそうもなく、先ほどのホテルに入ってフロントに直進。
白人背高のイケメンフロントマン氏が2人居て、電話を取ったり、お客さん相手になんだか忙しそうだけど、カウンタから出てきたところをつかまえて、友だちが「ウェア リズ ホテルアスペン プリーズ?」ってなことを言ったら、首かしげたように、モゴモゴ何か言ったような?他の用事があるのか、さっさと向こうに行っちゃった。
完全に無視された!愛想もへったくれもなし!
さあて、困った。どないする?
「異国でほっとけ!」扱いされて、途方に暮れたところに、聞きなれた日本語が耳に入って、振り向くと、ホテルの入り口からドヤドヤと日本人が数人戻ってきて、外を見ると、あ、昨日のお店の見慣れた車が!
それっとばかり、駆け出して、日本人運転手さんに「アスペンホテルの場所を教えてください」
「今から、アスペンまでお客さんを送っていきますので、よければどうぞ乗ってください」
ああ、なんという感激!
「地獄にほとけ」とまではいかんでも、「異国にほとけ」有り。

それから、マイクロバスは、まだまだ、坂道をぐいぐい登っていく。
私たちはその途中で左に曲がってしまって迷子になったみたい。

10時過ぎに部屋にたどり着いて、ようやくホッとしたら、どっと疲れた。
あのまま、オロオロしていたら、おそらくホテルに戻るのは真夜中近くになっていたかも。
クイーンズタウンのお土産店アオテア(AOTEA)さん、ありがとう。
ここのお店のメリノウールは、オークランドのDFS免税店より安かったよ。

それにしても、寂しげな夜の町外れをウロウロしていても、全く身の危険も感じなかったのは、よっぽど治安がいいのだろう。というより、歩いている人なんか居てへんほど、人が少ないってことでもある。
結局たいしたことではなかったけれど、NZ旅行で唯一のオロオロ事件ではあった。

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