木曾駒ケ岳      2002.8.4〜5

お天気が良くないので、登山は5日にするつもりでゆっくりと家を出る。自宅から4時間、駒ヶ根インターのあたりで激しい夕立にあい、車は滝の中を泳ぐがごとく。USJのジュラシックパークの急流すべりよりこわーい。
ロープウェイ乗り場まではマイカーは入れないので路線バスに乗り換える。1車線の狭いクネクネ道をバスはグイグイとのぼり、器用に対向バスとすれ違う。網棚のあたりでナイロン袋の束も揺れている。こんなところで酔ってたら、空気の薄い高いお山になんか登れへんで。
午後も遅いからロープウェイも並ばなくてすんだが、混むと3時間待ちなんてこともあるそう。待ってる間に帰宅できるってほどだよ。
ロープウェイは標高差950mを8分で登って2612mの千畳敷へ。あーあ極楽、楽チン。昨年の御嶽山といい、こういう楽して登れるところしか行かない方針です、我が家は。
ロープウェイの下の谷に沢や滝が見える。ロープウェイに乗らずにここをよじ登った人がいるそうな…イルカさんのお便り紹介。

私が登った時は風雨でした。やはり8月で、もう10年ほども前のことです。
ロープウェイの真下の沢を登りましたが(要するに沢登りでした) 滝にへばりついている時に振り向くと、ロープウェイの中から大勢の人がじっとこちらを見ていて変な感じでした。こっちは全身ぐちょ濡れで、登攀用具を重りのようにぶら下げながら滝の岩場にへばりついているのに、ロープウェイの中の人は色とりどりの服装で、でもなんだかおしくらまんじゅうしてるみたいに狭い空間に黙って押し込められていて、それがけっこう近い距離で通過していきます。中に乗っている人の顔の表情まで見えました。              

千畳敷カールは氷河時代に出来たくぼみで一面草状に広がり背後は険しい駒ケ岳の峰々が連なる。ときどき峰にガスがかかるが、見通しは良い。よおーしっ!花だより取材班GO!
まずは、千畳敷売店お土産ナンバーワンの「駒ケ岳の高山植物」1200円をget 1050円のもあったけど、今回は珍しくケチらず上等のほうを購入した。片手にデジカメ、片手にガイドブック。

   
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憧れの高山植物の花たちが私の足元に群れている。これはミヤマキンポウゲだったかな。遊歩道の縁にはいつくばって、デジカメを接写する。近寄りすぎるとピンぼけになるので20センチを目安にカメラを構える。花の名前がわかると撮るのも見るのも楽しいけれど、名前をこの頭に記憶させるのには苦労する。ブツブツとおまじないのように唱える。タカネグンナイフウロ…グンナイフウロ…グンナイグナイベイビー ♪ オッ、ちがったわ。

いつの間にやら、かばん持ちの夫もいなくなり、ひとりですっかりカメラマン気取りのひらりん。
1時間を過ぎるとデジカメが赤ランプの警告を発する「電池が切れるでー、早よ取替えやー」
ホンマにキャノン IXY の充電池はすぐに無くなる。80枚ほど撮れたし、これだけありゃ数打ちゃあたるってもんよ。曇っているので小さな青いリンドウの花は閉じたまま、明日はちゃんと顔を見せてね。
泊まりはすぐそこの千畳敷ホテル(ロープウェイの駅の階上)標高もお値段も高いけど場所代だね。

満天の星が見たかったけど、空は暗くて星も見えない。
夜の7時ごろスゴイ音がしてにわか雨が降る。3日ほど前に、すぐ南の空木岳で落雷の死者がでている。せめて雷は鳴らんでくれい。できたら、雨も降らんでくれい。それから青空もちょっぴりほしい。
コラコラ、欲張ったらアカンよ。そうそう、花の写真が撮れたし、もう頂上に登れんでもいいわ…
TVに字幕がついてないと「利家とまつ」もよくわからんし、PCもないし、8時半に就寝。
明日の木曽駒が岳の天気予報は「曇か霧、一時雨でしょう」 ま、しゃーないね。

翌朝、寝坊の私も5時過ぎに目覚めた。カーテンを開けると、オオッ!朝焼けの木曽駒!
これぞ、無欲の勝利でなくてなんであろう。
「晴れてるやん。早よ、起き!早よ、のぼろ!」

     
ナップザック2つにペットボトルとパンと雨具をつめて夫と息子に背負わせる。
そんなに寒くはないが、風がきつい。7時半、往復4時間ほどのトレッキングに、出発。
早くもロープウェイから軽装の人がたくさん出てくる。
山と反対側を見渡せば、雲海の果てに南アルプスが連なっている。その後ろに台形の頭がちょこっとのぞいているのは紛れもなく、ニッポンの山、富士山である♪あーたまを くもーの うーえに だーし

昨日歩いたお花畑周遊コースを巡っていく。雨にぬれた花がキラキラ光っている。
何べん見ても花がカワイー と思うのは私だけで、ウチの者は3人ともさっさと歩いていく。
「ほれ、見てみ、カワイイやん。ちゃんと、よう見いな、もったいないやんか」 と、ひとりごと
斜面に群れるミヤマキンバイのこの可憐さはどうや!もう、なんでわからんのやろう!

山際にたどり着いて急なのぼりが30分ほど。でも、ぜーんぜん、平気。ちっともしんどくない。
空気も薄くない。スナック菓子の袋だけが気圧の関係でパンパンに膨れてる。
息も切れない。足取りも軽く、あっという間に尾根に出てしまう。
革靴のオヂサンやサンダル履きのオバサンがいる。何ぼなんでもそれはないやろと言いたい。

    
 真ん中へんに富士山の頭が…     左が宝剣岳 右が天狗岩(横向きの顔)    スリル満点の鎖場 右は絶壁
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ここから左手に行くとに宝剣岳(2931m) 右方向に登ると木曽駒が岳(2956m)
まずは宝剣岳にアタック。岩の塊みたいな山なので、最後の登りは鎖を頼りに岩を巻くように登る。
片や、岩肌に鎖、片や絶壁。私が一番にゆく。怖いけどスリル満点。岩を攀じ登って頂上に到達。
頂上と言っても岩がそそり立っているだけで、10人も立てないくらい狭い。
御嶽山、乗鞍岳がそこに見える。
悪路ならぬ悪壁にてこずってるのか、夫がなかなか上ってこない。ようやく登ってきたものの顔が引きつっていたような…
下りの鎖場は余裕もあって、私はにっこり笑ってポーズを決める。誰かさんは岩肌にしがみつき、「山なんかどこが面白いねん!」とブツブツ文句言ってる。けれど、また、来年になったら、どこか連れて行ってくれるので〜す。
          
  木曽駒が岳頂上へ 後方に御嶽山         チシマギキョウ             木曽駒が岳(2956m)山頂
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木曽駒が岳までは緩やかな尾根道を登っていく。イヌでも登れるくらいのハイキング道だ。
てっぺんでパンとお茶で休憩。息子は祠のような売店でカップラーメン500円を買う。お湯も入れてくれて、ゴミも返せるし、安いんじゃない。
360度のパノラマを惜しみながら下山。帰路は花の写真を撮りつつ、ひとりまた遅れる。
例によって、デジカメの電池切れの警告が出る。最後のリンドウを撮るまではなんとしてもがんばっておくれや。
青い宝石、リンドウは? おおー、あった、あった。千畳敷のミヤマリンドウは小さい花びらを精一杯に開いて、短い夏の太陽の光を受けていた。
そして、8月も終わりになるとナナカマドが赤く色づいて、山は秋へと向う…

12時過ぎ、ロープウェイ、バスを乗り継いで麓の駒ヶ根市へ。
ほとんど汗はかかなかったが、「こぶしの湯」で入浴(500円は安い)とランチ。
青空の下、夏の風に吹かれ、白い雲をぼんやりと眺めての露天風呂も至福のひとときである。

西日を浴びながら高速道路を飛ばす。だんだんと下界の蒸し暑さが戻ってくる。
暑くて、眩しくて、私は助手席でパラソルをさしてた。
山でよりも車の中で日焼けしちゃたまらんわ、とお肌を気にしつつ、可憐な花たちやアルプスの峰を思い浮かべながら、いつのまにやら居眠っている私でした。

   (高山植物の写真は花だより7で)

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