勝手にコーヒーブレイク(65)   《グルメな日本》 

       
 「衣・食・住」と言葉は並んでいてもいちばん大事なのは「食」、食なくしては生きていけない。睡眠と食事、不眠では人は死なないが、食べられなくなったら命の終わりである。飽食日本、美味しいものを求めてあちこちで行列もでき、食べることがいちばんの楽しみという人も少なくない。しかし、私個人としては、美味しいものを食べられるにこしたことはないけれど、それがいちばんかと言われると、やっぱり、大自然の雄大な景色を見たり、小さな野草の花を発見して、カメラに収めたりするほうがなんぼか喜びである。
 美味しくってにんまりするのは、パラパラ塩を振った白い炊き立てごはん、夏の今は夫の作る家庭菜園で採れた新鮮茄子のぬか漬けの旨さにかなうものはない。水茄子なんて買わんでもふつうの茄子でじゅわっと水分たっぷり。ごはんとお漬物という、至ってシンプル過ぎる食だ。見た目や味にインパクト感も必要だろうけど、究極の美味しい料理というのは飽きない味のことだと思う。
 『英国一家日本を食べる』は英国人フードジャーナリストが妻と2人の幼い息子を連れて家族4人、札幌から沖縄まで100日間の食べ歩きレポート。日本人にとっては当たり前すぎてなんの疑問もないことも、改めて指摘されてみると、なるほどなぁと可笑しい。

・焼きそばはそばではなく、ラーメンの麺で作られる。
・全ての日本料理には関東方式と関西方式がある。

うなぎの開き方や焼き方、麺を冷たくするか温かくして食べるか、鮨飯をどれくらい甘くするか。おうどんのつゆの色が濃いか薄いかは昔から言われていることで、卵焼き大好きの私も、甘い卵焼きには閉口する。

・日本料理、日本人には食感バリエーションが多い。サクサク、モチモチ、ゴムっぽい、かみごたえなど。

日本語にはオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語)が多いというのにも理由がありそうだ。

・日本料理というのは、食材は神様からの贈り物、手を加えすぎないようにする。食材が本来持っている味を引き出す。

 基本的に和食はこれ何で作ってあるんやろ?という得体のしれない料理は多くない。それなのに、見た目は細工物のように彩り良く、ときにきらびやかで、ときにしっくり落ち着きのある風合いをかもし出している。そして、和食は季節の移ろいを料理に込めているので、器の中に四季を感じることができる。

・クジラを食するのは日本の文化である。

といっても、動物愛護の国の人には、やっぱり鯨やイルカは食べ物としては受け入れがたいのだろう。鯨は不味くはないが、どうしても必要な食べ物とは感じられないと言っている。6月に長崎に行ったときの夕食に鯨が出て、私も久しぶりに鯨を頂いたが、うーん、かなり美味しかったです。

・貴船の「ひろ文」流しそうめんのつゆがどんどん薄まっていく。

というのは笑えた。私はそうめんが好きではないので、このつゆが薄まっていくという感覚がすごくよくわかる。大阪で食べた千房の高級お好み焼きは気取りすぎてもうひとつだとか…
 京都の懐石料理や大阪の粉もん、広島焼き、博多ラーメンなど、全国うまいもん名物をくまなく巡って抜かりはない。ミシュラン5つ星の有名料理店から、町のおばちゃんがやってる庶民の店まで、ランクに関係なくあらゆるジャンルを食べつくしていく。読めば、たまにはミシュランの星の付いたレストランに行ってみようかと思ったりしても、いつのまにかそういう欲望も消えてしまい、私はやっぱりグルメではないなと思う。
 日本の食べ物だけに留まらず、日本文化のあれ?というようなことにも触れていて、外国人が日本のことを知るよいテキストにもなっている。美味しい日本に生まれて幸せだ。



       『英国一家日本を食べる』 マイケル・ブース  亜紀書房
 

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