勝手にコーヒーブレイク(62)   《聞くは難しい》           

昔から、大勢での会話は苦手だった。ふつうの人より少し聞こえにくいというのもあり、5人以上になると、絶えずだれかが話している状態だから、いつ話に入っていいのか、どこで自分の話をしたらいいのか、そのうちどうでもよくなって、黙って聞いているばかりになったりする。

失聴12年の間にますます大勢会話ができなくなり、人工内耳で音声会話ができるようになってもあまり変わらず。難聴者の中には、人の話はろくに聞かず、というより聞き取れないのか、一方的にしゃべるばかりの人も少なくないが、私は1対1か、1対2くらいの会話しかしないし、かなり相手を選ぶ。たいくつというか、気の合わない人とはすぐに逃げ出す。「ええっ?〇〇さん、すごくしゃべるよ」と思った方は、きっと私のお眼鏡にかなってる?()

「話を聞く、話をする」はコミュニケーションの基本である。男は「余計なことは喋るな」と刷り込まれてきたから、私の周りでも聞かなきゃしゃべらない男性が多い。一方的にあれこれ喋りたがる男性はこっちが話聞きたくもなかったりして()
女は組織に入っても、やっかいな仕事に直面しても、誰かに吐いて、憂さを晴らす」一般的に女はおしゃべりでコミュニケーションを取るのも苦にならない。が、コミュニケーション面倒くさいの私は、今流行りの傾聴なんぞ、とてもとてもできないし、ましてや、インタビューのように知らん人に話を聞くという行為は尊敬に値する。
「インタビュー(会話のこと)は嫌がられてもめげない図々しさが要る」
と阿川佐和子も書いている。知らない人に話しかけて、無視されたり逃げられたりしたら、それだけで意気消沈自己嫌悪になってしまう私には絶対にインタビューなんて無理無理。

「メールと会話は違う」
電話で話しにくい私たちはメールでやり取りすることが多いが、それでも、生友だち(実際に会っておしゃべりできる)の重要性はよくわかっていて、たまに近所の友だちと半日ぶっ通しでしゃべるとやけにスッキリ。メールの会話は感情と表情が出ないので、行き違いや誤解もあるので、できるだけていねいに書いたほうがいい、文字は消えないからマイナス面は悪印象になる…気を付けないと。

「先入観にとらわれない」
人のイメージというのは一度自分の頭に入ってしまうとなかなか直らない。昔、「○○さんがあんなこと言った、こんな態度とった」という話を聞いて、ずっと○○さんを避けていたことがある。その後、つきあってみると、ふつうに常識のある人だったわけ。一方的な人物評はつくづく当てにならないと思い知った。かといって、他の人には厳しいこと言って、私にだけはニコニコ愛想よく甘いこと言う人も信用できひんし。

阿川さんは面白いこと言っている。
「人は皆360度の球体で、角度に寄って見せる性格も少しずつ異なり、相手に寄って向ける角度を変えている」
下に威張って上にぺこぺこというのもそういう心理なんかな。人間って不思議というか油断ならないというか。

究めつきは河合隼雄の
「ただ聞くこと、それが相手の心を開く鍵」ああ、無理無理。まず、人間が好きでないとやれない。人の話を聞くのがしんきくさい私には、せいぜい、花相手にカメラ撮って、自分の思いを細々とブログ書いているほうが性に合う。

「話しやすい聞き方」相づち、うなづき、オウム返し、「それから?」「どうして?」「たとえば?」「具体的には?」
良い慰め方は、ことばではなく誠意ある気持ちが相手に伝わればよい。声の出し方、表情、仕草、照れ、躊躇、熱意、ちょっとした反応にその人らしさや人格、共感、魅力が感じられたら成功!と、何かと参考になります。

『聞く力』−心をひらく35のヒント−  阿川佐和子  文春新書

今までの本のメニュー  

 ひらりんBOX 

inserted by FC2 system