勝手にコーヒーブレイク(58)   《高知県は面白い》           

 40歳前後は、本当にたくさんの本を読んだものだ。年間120冊以上はクリアしていたので、3日に1冊の勘定になる。思い起せば私の30代は暗かったやんなぁ。子育て中で外出もままならず。失聴したので人付き合いで落ちこぼれ、鬱屈してひたすら本を読んでいた。しかし、よおく考えたら、それなりに友だちもいて、子どもを置いて旅行にも行ったし、パッチワークやお習字、アートフラワーに手作りフリーマーケットと、いろいろやってたんだけど、やっぱり、しんどかったぁ。人工内耳さまさまですわ()

50歳代になってからは、今度はパソコンが面白くて、本など読んでられへん生活になり、今に至るが、最近、また、わりとよく本を読むようになった。しっかり、2.0の老眼鏡をかけたら、ショボショボ目もなんとか文字を拾ってくれるし、去年から図書館でインターネット予約ができるようになったのも大きい。新聞や雑誌で面白そうな本を見かけたら、すぐにパソコンからネット予約を入れておく。人気のベストセラー本は予約が2百件以上となっていても、まあ、待つうちにいつかは順番が回ってくるもんだ。自費購入の本なら、いつでも読めるで積ん読になったり、もったいないから無理して読了したりするけど、借りた本ならば、10ページ読んでつまらんかったら、さっさとあきらめる。好きなミステリや時代小説にこだわらず、読みやすい青春小説風なのもいい。今どきの新書はわかりやすく書かれているからこれも読む。ベストセラーになっている本はだいたい当たり外れはないが、「置かれた場所で咲きなさい」など辛気臭いのもあったり…個人の好みですが。

『県庁おもてなし課』は「頭が固い、融通が利かない、だからお役所は…。求められたのは創造性や柔軟性よりも硬直性だ。自治体というのは効率よりも公に言い訳が立つことを優先せなぁいかん組織よ==県庁ルール」

地形や立地が災いして列島開発に乗り損ねた高知県。新幹線はない、地下鉄も地下街もない、モノレールもジェットコースターもない、金もない、あるのは海・空・川・森の自然だけという高知県。県庁おもてなし課の若き職員「掛水くん」が、地元出身の若手人気作家「吉門喬介」に高知県観光特使を依頼する。依頼したあと、1ヶ月ほったからし音沙汰なし。これだからお役所は…クーポン付の名刺を作成して配るまでに、また、時間、時間…半分くらいは作者の体験を交えた高知県庁を舞台にした観光小説で、ちょっぴり青春小説風な仕上がりでイッキに読めてしまった。

「名刺にクーポンの有効期間を設定したところで、翌年も新しい名刺を作って配るなら、無期限と同じだ」なるほどである。吉門が掛水くんに公務員の仕事のあり方を辛辣に時には投げやりに言い放ち、言われたほうは腹立たしいが、憎めず、めげずに食らいつく。昔、県庁で「パンダ誘致作戦」をぶちあげて辞めざるを得なかった伝説の清遠さんを訪ねたり、アルバイト職員のしっかり者の相棒の多紀ちゃんと共に一個ずつクリアしていく。

掛水くんと多紀ちゃんとの恋の成り行き、吉門さんの隠された家族やら、「…知っちゅうか」「イナカには金がないがよ」「載っちょらんき」土佐弁の会話が生き生きしてとっても楽しい。いきなり、カーナビ無しで県内を連れまわされて、パラグライダーで飛ばされて、思いつきで馬路村へ出かけてみたり、観光とは何かという話も満載。ああ、秋の高知県馬路村を訊ねてみたくなった。最後の清流の四万十川にも行ってみたいがよ。

人物キャラクターが秀逸なので、ドラマになるなら配役は?と思っていたら、20135月に映画公開されるそうだ。主演は錦戸亮に堀北真希、清遠役に船越英一郎。堀北真希はいいとしても、掛水くん役は向井理にやってほしかったなぁ。(笑)

『県庁おもてなし課』   有川 浩(ひろ)   角川書店  

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