勝手にコーヒーブレイク(45)   《医学物ベストセラー》

今年の春は花粉が大飛散で私の目も鼻も数年ぶりの悲惨状態になった。家を密封して空気清浄機をかけて、必要以外は外出もせず、ひたすらこもる日が続いた。ここ何年も読んだ本が年間10冊にも満たなかったが、おかげで、久しぶりに読書に励むことができた。

 本は買ってもあと邪魔になるだけなので、新刊でよっぽど早く読みたい以外は図書館で借りる事にしている。しかし、ベストセラーになると、図書館も予約待ち3ヶ月などけっこうな時間がかかるし、いつでも借りられるかつてのベストセラー本は手垢にまみれ汚されて不潔なのも多く、タダで読もうと思ったらなかなかたいへんなのだ。

 2ヶ月間で読めたのは、宮部みゆきの江戸は長屋の捕り物帳、時代ミステリーものや、今、評判の海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」シリーズである。最近のベストセラー小説は即テレビドラマになったり、映画化されて相乗効果を狙っているらしい。

 記憶力が乏しくなったこの頭では文章だけでは想像がついていかず、少し時間を置いて続きを読み出すと、たちまち行き詰ってしまう。えーっとこれは誰やったぁ?と。その点、映像になるとストーリーや内容も比較的よく憶えている。テレビ版の「チーム・バチスタ…」は見なかったが、映画版はテレビ放映で見た。先に映画版を見てあとから原作を読むと、筋書きや結末がわかってしまって興味が薄れないかって?心配御無用。映画の内容も忘れ果てているから、原作を読んでも新たに楽しめる。これからどうなる?犯人はだれ?といたって新鮮なもんです。

 それに、原作と映画版では登場人物のイメージが全く違っていて、原作では主人公の田口医師は男性なのに、映画では竹内結子の女医になり、見てくれもっさり、ずんぐり体型の厚労省役人が阿部寛のキャストになっていて、そういう違いもまた面白いかも。

 さて、肝心の小説の内容は、心臓のバチスタ手術を手がける最強の大学病院チームに術死が続いて、田口医師が調査するところから始まる。作者は現職の医師だということで、医療、病院、手術のことはリアル感たっぷりに描かれて迫力あるシーンが続く。人物造形もメリハリがあり飽きさせない。

 シリーズは全4つ程あるが、やはり1作目のバチスタがいちばん面白く仕上がっている。2作目の「ナイチンゲールの沈黙」はちょっとそんな非現実的なことあり?という、え?え?なところがあり、医療サスペンスにそぐわないような。3冊目の「ジェネラル・ルージュの凱旋」は2作目と同時進行の病院内の別の出来事を別の方向からとりあげていて人物も交錯、私も頭も混線、やっとの読了で花粉も終了。

「チーム・バチスタの栄光」上・下
「ナイチンゲールの沈黙」上・下
「ジェネラル・ルージュの凱旋」上・下

                        海堂尊(かいどうたける) 宝島社

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