勝手にコーヒーブレイク (38)   《シュリーマンの見た日本》        2007/05

 50年以上生きていると、趣味もどんどん変わってくるが、旅行好きは十代の頃より続いている。今も年に2回ほどはどこかへ出かけている。
僻地に探検?優雅な滞在型リゾート?などでなく、旅の内容はごくありきたりの観光旅行で特別なものは何もない。
どっちかといえば、歴史的紀行よりも地理型の自然探勝が好きかな。
この地で武田信玄が戦った、このお城にだれが住んでいたといわれても、想像力を駆使していにしえのドラマを自分の頭の中でイメージしないとちっとも面白くない。
歴史も苦手だったし、そんな面倒なことやってられへんわ。
手っ取り早く、見てるだけで「ワァーッ!オオーッ」と感嘆できる風景や自然美がよろしい。

 シュリーマンはかの有名なトロイア遺跡を発見した人であり、41歳で自営の商業をやめて、1865年から世界漫遊に旅立った。

 中国(シナ)訪問のあと、日本には約1ヶ月間の滞在。ちょうど梅雨時で、毎日雨、雨の記述が多いが、精力的に見聞し、日本文化と民族を的確に把握していった。
その時期、中国は清朝末期であり、阿片に侵された巨大帝国の荒廃ぶりも書かれている。

「シナ人は偏執的までに賭事が好きであり…全てがまったく顧みられず、いままさに朽ちようとしていた…無秩序と退廃、汚れしかない…崩壊するにまかせているのを目の当たりにするのはじつに悲しく、心痛むことだ」

 万里の長城は訪れたことがないが、上に登るにしてもかなりの急登らしい。
西方の険しい山々の果てまでくねくねと延びる長城はシュリーマンをして、ヒマラヤ山にも勝ると絶賛した。
政治腐敗の清国のまさに朽ち果てつつある長城であったが、この膨大な人工物である長城にはいたく感嘆したようだ。

 シナには批判的な記述が多いシュリーマンであるが、日本に対しては非常に好意的な目で描写している。
「小船には色が塗っていない。大船でも決して色を塗らない」なるほど、言われてみれば、中国の船はド派手な色彩に竜や目玉デザインが付いていたりするのに、和舟は簡素に白木だけの造りで、すべて「清流の高瀬舟」、団扇の絵のような船である。
色をつけないのがやっぱり詫びや寂びにも繋がっているのかもしれない。
「税関で賄賂を取らない…好意的で親切な応対…日本人はみな園芸愛好家である…日本の住宅はおしなべて清潔さのお手本になるだろう…家具の類がいっさいない…どんなに貧しい人でも日に一度は公衆浴場に通っている…」

 日本民族は元来、清廉で、情趣豊かな民なのである。口先だけで「美しい日本」と唱えていてもアカンのだ。

 とりあえずは、畳の表面が三分の二しか見えていないパソコン部屋の片付けでもするか?しかし、この猛暑。。。

「シュリーマン旅行記 清国・日本」 ハインリッヒ・シュリーマン 講談社学術文庫 

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