勝手にコーヒーブレイク (34)   《京都の四大学 青春物語》        2006/08

  たった3ヶ月に1冊のことなのに、毎度、読む本に困る。図書館で借りても結局は読まずに返却してしまうので、自腹で買うことにしている。お金出したし、もったいないから読もうか、という気になれるってことだ。「ダ・ヴィンチ・コード」「ウェブ進化論」「エンデュアランス号大漂流」が積み上げられ、全て挫折。最後のこの1冊が読めなきゃ、コーヒーブレイクもここで中断か?という切羽詰まったところで読了した。面白い本に当たってよかった。

「鴨川ほるもー」友だちがめっぽう面白いよ、絶対にブレイクして、映画になるかも?と太鼓判を押すもんだから、増刷されるのをギリギリ待って、ようやく手に入れた。いったい、なんやねん?この本は?友だちの紹介文を読んでも、帯を見ても、さっぱりわけがわからん。京都を見知っている者にはなかなか面白そうだというくらいで読み始める。ファンタジーでもSFでも、怪奇モノでもなく、あえていうなら青春小説なのかも。

 青春とは、そもそも陰陽五行の理で春を青に夏を朱に(朱夏)秋を白(白秋)そして冬を黒(玄冬)に言い習わしたものである。生きるものは全て春から始まり冬で終わる。そして、この4つには方角と動物も当てはめられていて(キトラ古墳の壁画で有名に)
青春=東=青龍=京大=(サークル名)
朱夏=南=朱雀=竜谷大=( 〃 )
白秋=西=白虎=立命館大=( 〃 )
玄冬=北=玄武=京都産業大=( 〃 )

 この大学の割り当てが地理的にも絶妙で唸らされる。各サークル名もありきたりなようで芸が細かく、組、団、会、隊などがつく。
 主人公はかの陰陽師、阿部清明と同じ、二浪で京大に入った阿部くん。葵祭りのエキストラの帰りに陳腐な勧誘ビラで誘われて何をするのか?「ホルモー」するんである。ホルモーってなんやねん?というと、ネタばらしになってしまうが、京都千二百年間都に棲み付くオニを使っての競技みたいなもんかな。ばかばかしいといえば、それまでだけど、うーん、ひょっとしてそういうのんが有りかなって思わせるほど、グイグイと読み進んでいく。それほど京都の歴史は深いのである。鴨川の河原や下鴨神社の糺の森(ただすのもり)三条京阪など、なじみの場所が次から次へと繰り出されて、アハハ、うふふと楽しい。

 これはぜひとも実写版でCGを駆使しておどろおどろしくも胸ときめく青春映画にしてほしい。襤褸を着た何百匹ものオニたちがわらわらと三条大橋を音も無く走っていく。想像力に乏しい私でも映画版なら悲鳴をあげそうだ。
 暑熱のお盆の昼下がり、風もないのに、勝手口のドアがスーッと閉まった。
心なしか、ひいやりとした風がひと筋入ってきたような…ふつうには見えないものが見えてしまったら…ひーっ!

「鴨川ホルモー」 万城目 学     産業編集センター

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