《我は方向オンチになりて》 勝手にコーヒーブレイク (22)  2003.08

「人工内耳を入れると方向オンチになる!?」
6月の人工内耳友の会ACITA名古屋懇談会でアホな告白をして、皆さんに笑っていただきました。

でも、実際、ここ5年くらい、ほんとにひどい有様なのだ。
大阪の繁華街で、以前はすんなりと行けたのに、やたら迷ってしまって、右往左往してしまう。映画館の場所がわからなくなって、通りの宣伝マンにたずねたら、黙って上を指差された。指先の方向は自分の立っている真後ろのビルであった。
昔は初めての駅でも、見当つけてさっさと動けたし、知らない所でも地図を見れば、ちゃんと目的地に到達できた。それが、今じゃ、名古屋駅前のタクシー乗り場や新幹線の改札口、行きも帰りも同じ所を歩いているはずなのに、全く見覚えなく方向がわからない。「年下のクセして、頼りないなー」と友人に白い目で見られて、頭を垂れて後を追う始末である。

数年前、究極の迷い?を経験したことがある。
入院中の友だちを病院に見舞いに行ったときのことで、1度目は連れと同行、2度目は一人で出かけた。病院は建て替え中で、面会受付で地図をもらう。取り壊しを待つばかりの無人病棟の静まり返った廊下、不気味な音をひびかせる階段。古ぼけたエレベーターにひとり乗り込むと、病院の怪談並みにかなり怖い。
「こことちゃう、こんなとこ、前に通ってへん」と行きつ戻りつ、ようやく、友だちの病室にたどり着いて、こわばった笑顔で「ハイお見舞い」と差し出した小さな花束。ごっそりと中身がない!花だけ抜け落ちている。あわてて通路を戻ってみたが、結局スイトピーを2本回収できただけであった。残りの花は誰かに拾われて病人の慰めになったのだろうね。

何で?何で?こんな状態になってしまったんや?なぜ、方向オンチになるのか?
方向オンチは改善することができるのか?そんな私にぴったりの本を見つけました。

『方向オンチの謎がわかる本』
方向感覚とは目的地にたどり着く能力、ナビゲーション能力のことである

目印を覚える、方向を正しく把握するという二つの働きが複雑にからんでいる。この本には「方向感覚質問用紙」というのがあって、自分の方向オンチ度を測れるようになっている。

「話を聞かない男、地図を読めない女」がベストセラーになったが、方向オンチは生まれつきでも性差でもなく、克服できるのだ。目印を覚えて、それがルートのどこかを意識する習慣をつける。目印とは風景、建物、曲がり角である。曲がり角で振り返ることは有効であり、常に頭の中に地図を描いて進んでいくとよい。

カーナビ、巡航ミサイルのハイテク機器の話など、方向認知に関する興味深い内容もあって、すぐに読めてしまう。

さて、「人工内耳と方向感覚の関係は?」のとんでもない質問に対するドクターの答え。人工内耳を入れても三半規管の機能等は元に戻るそうです。したがって、方向オンチになるのは私の予想通り「老化現象でしょう」ということだった。本の中にも三半規管の働きと方向感覚との関連性はないと書かれている。

人工内耳のせいでねぇ、という言い訳も使えなくなったし、こうなれば、がんばって、方向オンチを改善させるべく努力したいと思う。
しかし、読んだ内容もほとんど忘れちゃったようでは、目的地への道は果てしなく遠い。人生の到達地点は死なのだから、道草の多い分、人生の達人となりえる。
そう、がむしゃらになって、失敗して、迷い、泣いて笑って、目的地へ着くのも悪くないかもしれない。

    『方向オンチの謎がわかる本』     村越 真     集英社

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