《人気のアップル》 勝手にコーヒーブレイク  (14) 2001.08

今回は「でも・しか」本、お茶にごし本である。というと、いつもは「なら・こそ」本か、玉露本かといわれそうだけど、いつももたいしたことありません。

村上春樹のエッセイを、「どうせ、売れるんだろ」とか、村上春樹が書いたから売れるのであって、無名のライターが同じようなことを書いても「下手な文章、書き直せ」になると、新聞の評に載っていた。

私も、大ベストセラーになった『ノルウェーの森』以外の小説は読んだことがなし。でも、エッセイは面白いのだ。

『村上ラヂオ』は雑誌ananに連載されていたもので、必然的に若い娘向きになっている。

ムラカミさん独特の言い回しがある。

…うまく言えないけど。…ありますよね。…ほんとにそう思う。
そのへんはまあ、あれですけど。


「である」と「ですます」の混在。それが、気に障る人も多いけど、私もよく、ごちゃ混ぜに書きます。

エッセイの題材はわりとしょうもない事柄が多い。「赤い靴はーいてた…」の「いーじんさん」とは何か?問題では、
人生にはある程度の理不尽な謎が必要なのだ。柿ピー問題では、柿の種が突っ込みで、ピーナツがボケ役…世の中には甘いものと辛いものがあって、両者は互いに協力して生きている等。

ドーナツやコロッケ、髭剃りや柳なんかにもムラカミ独自の見解と薀蓄、箴言が添えられているわけ。

人生には感動も数多くあるけれど、恥ずかしいことも同じくらいたくさんある。でもまあ、人生が感動ばかりだときっと疲れちゃいますね。人生は人の事情にはおかまいなしに勝手に流れていく。ラッキーなことがまとめて続いたあとには必ずやその揺り戻しがある。たとえ、些細なことでも、複数の視点から実証的にものを考えてみるのって大事ですよね。

読者が自らの事情に合わせて読み込めて、そして、ちょっとした人生訓にフムフムと納得できるようになっている。でも、これもムラカミさんが言ってくれるから同調できるわけで、同じことを相田みつおさんなんかに言われたんじゃ、私でも、わかりきったことをそんなご大層に言ってくれるな、ほっといてくれ、とばかりそっぽを向くだろう。

だいたいにおいて女の人は、太巻きの両端の飛び出たところが大好きみたいだけど、どうしてだろう?

んなこと決まってる、飛び出たところは具がいっぱいでジューシーなんですよね。

この本で、ひとつ、オオッと発見したことがある。ムラカミさんはアップル社のパソコンを愛用している。こだわりのある人に人気がある、通称マックですね。ウインドウズのマイクロソフト社のほうがマックって呼べそうなのになぜ、アップル社のほうをマックというのか私は疑問だった。これは、アップルの商標がマッキントッシュなので、マックという。そして、ここからが大事、マッキントッシュというのはムラカミさんの大好きなりんごの品種で、深紅でぎゅっと硬くて酸っぱくて、安価なりんごのこと。日本名は旭、紅玉に似たようなりんごらしい。

りんごマークの「アップル」のスイッチをびよーんと押して…赤くて酸っぱいりんごをかじる…マックから乗り換えるつもりはない。だってウインドウズにはりんごのマークがついてないんだもの。

これを読んだファンの何人かは実際に、マックを購入したのではないかと私は思う。

「村上ラヂオ」    村上春樹  マガジンハウス

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